掃き溜めの鶴

どこにでもいるフツーの26歳のリアル

りんごジュース

りんごジュースのように甘くて優しい祖母が亡くなった。

亡くなった日の夕方にお見舞いに行くと、想像以上に元気な祖母の姿があった。

半年前に遊びに行ったときよりずっと痩せて別人のようだったが、愛嬌のある優しい顔立ちは変わっていなかった。

祖母は冷たい手で私の手をぎゅっと握り、上下に動かした。そして何度も私の名前を呼んで、笑顔を見せてくれた。

ああいう場って何を話したらいいか分からず、じっと見つめてくれる祖母の視線に戸惑って困り笑顔を作ってしまったことが心残り。ごめんね。

 

祖父は毎日かかさずお見舞いに行き、祖母への愛を語り、投げキッスをして帰っていたらしい。

サエ子ちゃんは厳しくて怒ると長かったんだ、と困った様に言いながらもその声には愛が溢れていて、ラブラブだった祖父と祖母。

2人暮らし、90歳で最愛の妻に先立たれ、洗濯の仕方は分からない、台所にもほとんど立ったことのない祖父が、弱った足を引きずりながら1人になった広い家で暮らしていくのは、あまりに寂しすぎる。

祖母が骨になるまで、何度も何度も祖母の顔を見て、触って、弱々しい声で、残念だなぁって涙を流し震える祖父の細い肩が痛々しくて、自分は祖父に何もしてあげられない、悲しみを減らしてあげられないのがやるせなくて虚しくて、辛かった。

祖母が亡くなったのはもちろん悲しいけれど、残された祖父のことを思うと同じくらい悲しい。